comm.arch.

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2020/11/29

comm. arch. RESERVE とは

comm. arch. RESERVEは、メインラインのcomm. arch. とは別に、ひとりの手横編み機/ハンドフレームマシン職人(人力で編むニットマシン)により製作される特別ラインです。

 

私はブランド創業当初から、国内に現存するニット工場やニット職人を訪ねてまいりました。その中のひとりであるこの職人は東北地方の山奥にある自宅内の工房にて、親子二代で小さなニットメーカーを営んできた方です。
初めてお会いした時にその方から聞いた、ニットウェア製作の経験値、情熱、知識は、私が今まで積み重ねてきたデザイナーとしての自負を一蹴しました。

細部にまで詰まった意味深い「こだわり」と、妥協無いものづくりをし続ける強い姿勢に、膝から崩れ落ちるほどの衝撃と感銘を受けました。

 

自身の顔や名前を出すことを一切拒否し、ニットウェア製作に人生を捧げるこの職人に製作して頂いたニットウェアは、comm. arch.にも、私の人生にもとても大きな影響を与えました。

comm. arch. RESERVEはその職人に敬意を込めた、貴重なニットウェアラインです。

(comm. arch. メインラインでもハンドフレームニットを展開しておりますが、この職人とは別の方に製作をお願いしています。)

職人の家は、怖いほど細い山道をひたすら車で上って行った、林檎農園の中にあります。
平屋建ての家に工房をつけ、父親の代から毎日ニットマシンで製作を続けています。この小さな工房で、世界で名声をあげたブランドの高価なニットが製作され続けています。

 

実際に私が工房を訪れた日も、市場では十数万円で販売されているようなブランドのニットサンプルがあちらこちらに見られました。

手横編み機自体は、いわゆる「ニット工場」の自動編み機と比べると小さく、機能も限られていますが、人力で時間をかける分、それがニットの厚みや表情にあらわれると私は思います。

 

私の経験上、同じ糸を同じゲージで編んでもハンドフレーム製と自動編み機製だと、ハンドフレーム製の方が、厚みがありしっかりしているのに柔らかい印象を受けます。
私は、そこにニットウェアの贅沢さを感じるため、AWニットの7割以上をハンドフレーム製にしています。

 

ここからは、具体的に comm. arch. RESERVE の[ HAND FREAMD FULL NEEDLE P/O ]の仕様が、他のニットとは何が違うのかを解説していきます。

 

 

 

手横編み機(ハンドフレームマシン)の基本的操作

これが手横編み機(ハンドフレームマシン)です。

針に糸をかけ、キャリッジを左右に動かします。

①方向へ動かして1段編み、②方向へ戻してまた1段、③方向へ動かしてもう1段編んで行きます。

 

 

簡易な家庭機で編む様子を下記URLから動画でご覧頂けます。

hand knitting machine demo video – YouTube

図のように、裾から左右に機械を動かすことで編んでいき、アームホール部分で目を減らして成型するために、写真のように手作業で針から目をすくって、隣の針へ移します。

これが「減らし目」です。
下記URLから、もう少し簡易的な機械(家庭機)で減らし目をする様子をご覧頂けます。

Lesson 16 Increase & Decrease – YouTube

 

この作業を、ひとめひとめ手で行い、服の形にしていきます。

カットソーのように、ハサミで生地を切ることはありません。

 

 

 

続いて、この職人がこだわっている、ニットの細部に関してご紹介します。

職人のこだわりは、まず、襟リブのリンキング(接ぎ目)部分に凹凸がないのが特徴です。

首元のリブは、人の手で付けているのですが、見た目がとてもスムーズで美しいリンキングです。

肩部分の目を増やし(赤Y字部分)傾斜を少し外側へ広げています。
これが職人のこだわりで、着用時のシルエットを美しく見せる方法とのことです。

既に出てきた写真のように、編み目を一回ずつ手で移動させ、目を増やして編んでいきます。

市場で見られる多くのニットウェアのアームホールは、図①(脇から鋭角に入れて、そのまままっすぐ上がる)、図②(アームホールのカーブがほぼ無く、なだらか)が多いです。これは製作がより簡単なためです。

 

一方、職人は、布帛パターンのような見え方にしたい、という意図があり、わざとカーブを大きくなだらかにしています。その分、また編み目を一回ずつ手で移動させる作業を繰り返し何度も行わなければいけません。

リンキングマシンです。
前ページの襟リブや袖、身頃脇など接ぎが必要な箇所すべてに使用します。

 

*ハンドリンキングの動画を下記URLからご覧頂けます。

(23) Signle Link Attach Neck Trim – YouTube

 

リンキングは、動画のように接ぐ部分の端にある編み目をひと目ずつマシンの針に刺していきますが、職人はより接ぎ目をスムーズに見せるために半目ずつ刺していきます。

(実際に半目ずつ刺す人が皆無なため参考資料がありません。分かりにくく申し訳ありません。)

編み上がり、リンキングが終わった後に、起毛加工機で表面に軽く起毛をかけて頂いてます。
左の写真が起毛加工機です。「アザミ起毛機」とも呼ばれますが、厳密に言うと、アザミとは全く異なるフラースチーゼルという植物を乾燥させたものが
機械にゴロゴロ付いています。かなり鋭利です。

 

*下記URLから起毛加工している動画をご覧頂けます。

ニットの起毛加工(フラーズチーゼル使用)[通称アザミ起毛?]動画パート2(湿式タイプ) – YouTube

現在、起毛加工機の生産はされていないので、起毛加工ができるニッターは限られています。
(チーゼルは海外物の方が実が大きいので輸入物を使用されることが多いそうです。)

地味な業務ですが、1着起毛するのに、20~30分ほどかかる根気のいる作業です。

糸の切れ端の処理など、最後の仕上げは人の手のみでできる作業になります。
丁寧に仕上げて頂いています。

以上が概要になりますが、文章では説明しきれない職人のこだわりは、まだ山ほどあります。
通常、ニットウェアの製作をする場合、私が素材から仕様まで100%指示をし、少しでも意図と違うようなあがりだと修正を依頼します。しかし、comm. arch. RESERVEの製作は、70%ほどを私が決め、残りの30%を敢えて職人の判断に委ねています。

そして、彼の「こだわり」を詰めて頂いています。実際に、先に説明した仕様は、全て職人の判断による仕様です。

他社では、こちらからお願いしたとしても、面倒か不可能なため作って頂けない仕様です。

 

機械化や量産型産業が当たり前の中で、真逆の作業を、人生をかけて行っている職人の姿勢を目の当たりにし、そのことに一点の曇りもない発言にも衝撃を受けました。

彼は、いくら有名なブランドから製作依頼を受けようが、それが発注の多いブランドだろうが、ブランドの姿勢が彼に合わなければ仕事を引き受けない、というスタンスを貫いています。
そのため、この職人が製作したニットウェアはそれほど多く市場で売られていません。また、今の時代にこれほどこだわった商品は、たくさん売れるものでもありません。

私は幸運にもご縁でこの職人にお会いし、機械編みや手編みを行っている経験を気に入って頂き、「ぜひ携わりたい。」とおっしゃって頂きました。

 

職人には跡継ぎがいないため、年齢的にもあとどのくらい製作を依頼できるかはわかりません。しかし、少しでも多くのニット好きなお客様のために、こんな人がまだ日本にいるんだよ、ということを伝えたくcomm. arch. RESERVEを立ち上げました。

 

comm. arch. RESERVEは2018年AWから、2型のみで展開しております。

 

 

 

HAND FRAMED FULL NEEDLE P/O

SKINS (ミックスベージュ)

AUTUMN LEAF(ミックスブラウン)

PINE TREE (ミックスダークブラウン)

COALMINE (ミックスチャコール)

 

 

 

 

 

 

 

HAND FRAMED FULL NEEDLE C/D

SKINS (ミックスベージュ)

AUTUMN LEAF(ミックスブラウン)

PINE TREE (ミックスダークブラウン)

COALMINE (ミックスチャコール)

 

 

 

少々マニアックなアイテムになりますが、ぜひ一度お試しください。