comm.arch.

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2024/08/30

10th Anniversary 御挨拶

 

2014AWにスタートしたcomm. arch. は、この2024AWで10年を迎えます。

ひとえに、comm. arch.を長くお取扱いいただいているセレクトショップの皆様、そして店頭やオンラインストアにてご購入いただき、袖を通していただいているお客様の支えがあってのことです。

 

こころより感謝申し上げます。

 

comm. arch. を始動する決意をした2013年の日の事、そして会社勤めをしながら、誰にも言わずにドキドキしながら2014年秋冬展の準備を始めていた期間の事を、昨日のように鮮明に思い出します。

 

当初は「若さ」だけで突っ走ることができましたが、その後数年間は、何の前触れもなく「とんでもなく大変な事を始めてしまったのではないか」という恐怖感に襲われる事が何度もありました。

(製造業や小売業は、先に大きな金額のお金が出ていくため、特に最初は売り上げがゼロにもかかわらず、私生活で使った事のない金額が必要になるためです。)

 

私の場合は、現在も企画、生産管理、営業、経理、発送業務、ECサイト運営など、通常ブランドさんが複数人でされている業務をすべてひとりで行っております。

その事を雑談の範疇で他の方にお伝えすると驚かれ、「私が勝手に好きでやっていることなので~」と返答するのですが、本当の理由は、それをひとりで運営できるくらいにならないと、人生に自信を持てないほど拗らせておりました。

 

お蔭様で10年間同じような業務を繰り返しているのですが、お店のオーナー様方にはお会いするたびに緊張しますし、20回も同じメンバーで行っているスタイリング写真撮影も、前日は緊張でしっかり睡眠をとれないまま朝を迎えます。

そのたびに、「自分はcomm. arch.を創るために生まれてきた人間だから大丈夫」「自分みたいなできるヤツ、なかなかいないぞ!」と自己暗示をかけると少し落ち着き、人並みに斜め45度を見上げて歩けるようになります。この暗示法はおススメです。(笑)

 

ネガティブで謙虚そうな事ばかり並べましたが、その一方で、私にはとても勝気な一面もありました。

特に幼少期は、勉強やスポーツなど自分が好きで続けていることは「一番」でなければ気が済まず、いつしかそのひとつが「洋服」になりました。

(私の場合、洋服を「着ること」よりも「作ること」の方が好きでした。)

 

満を持してロンドンの美術大学に入学した後の記憶の多くは、大学の課題と制作活動に没頭した日々の事です。

あまりにも自身にプレッシャーをかけすぎ、神経を擦り減らしながら大学に通っていたため、当時の先生のちょっとしたブラックジョークや理不尽な言動にも敏感に反応し、たくさんの人がいる前で大喧嘩をしたことが何度かあります。今思うと「若気の至り」なのでしょうが、一秒たりとも無駄にしたくなく、一日一日を200%で生きたい、と思っていたプレッシャーがそうさせたのだと思います。(あくまでも20年以上前の話ですよ!!)

 

そんな切羽詰まった、「今日で人生が終わる」感覚でものづくりをしていたら、そりゃ完成する物は、良くも悪くもインパクトがあるものになりますよね。(大汗)

美術大学1年生の最初に行われた小さな合同展示会から卒業制作展まで、作品を展示する機会があると、ほぼ毎回外部の会社やデザイナーから、個人的にお仕事やプロジェクトの依頼をいただきました。その時に「今やっていることが自分に合っている」という確信をしました。

 

美術大学は、そのまま突っ走って良い成績で修了するのですが、人生は正と負の法則が成り立っているというか・・・それまで良いこと尽くめだった「正」を急いで均すかのように何をやってもうまくいかない「負」の社会人時代に入ります。

先にも述べたような、切羽詰まったキャラクターのままでは、もちろんどの会社にも適応できず、それを自覚し自身の矯正を始めると、全てを更地からスタートした感覚に陥りました。

 

人生で従事することが無いと思っていたアパレル営業職の中で、まず洋服という「嗜好品」に興味をもっていただき、更に袖を通していただくことがどれほど大変な事なのか、を思い知りました。

「モノ」が良くなければいけないのは大前提ですが、それを選ぶ環境、雰囲気、おススメする時のこちらのテンション、言葉遣い、所作、お客様が欲するものを察知する勘・・・そして現実問題、対価をいただかなければそのお仕事が続かないことも痛感しました。

 

この経験は、学生時代に「自分の事だけ」考えて作っていた洋服とはまるで真逆で、あんなに神経を擦り減らして頑張っていた時間が全て無駄だったのでは、と後悔するほどでした。

しかし、同時にそれが、暗闇に見える小さな光のようにも思え、今度はその分野で「一番」を目指したい、という思いが急速に大きくなっていきました。

学生時代から20年経った私がここで言う「一番」とは、売上至上主義のファッションビジネス業界で「一番」という意味ではなく、ひとりデザイナーが作る洋服ながらも、先に述べたようにお店様やお客様の精神を惹きつけ、「やっぱりcomm. arch.が一番着やすいね」「無意識に毎日comm. arch. 着ちゃうよね」と言っていただけるような「一番」です。

(とは言いながら、順位をつけられる事象ではないため、永遠の目標としております。)

それは、店舗数が多いお店に扱ってもらうことではないし、流行りの芸能人やスタイリストに着てもらい注目してもらうことでもない。世の中にある膨大な商品群の中で、なぜ他のブランドではなく、comm. arch.を手に取っていただくのか。

私自身がその理由をできるだけたくさん設け、それを真摯に実行し続けることで少しずつ見えてくるもの、と考えます。

長い年月かかるのは覚悟していたのですが、一度人生を更地にし虚無状態になった私が、もう一度人生に意義を見出せる方法はそれしかない、と奮起し、紆余曲折ありながらも、お蔭様で10年続けられました。

 

この文章を書きながら改めて昔の展示会資料を見返すと、まだ不慣れなcomm. arch. に将来を期待して下さりご発注を下さったお店様、そしてそのお洋服を喜んでご購入いただいたお客様が10年間一緒に歩んで下さっている事に、言葉にならない感謝の念を抱くと共に、もしかしたら永い夢をみているのでは、という気持ちにもなります。

 

ここまで読んでくださっている方は、comm. arch. をとても愛してくださっている方と存じます、本当にありがとうございます。

 

最後に、私がcomm. arch. を毎シーズン悩みながら製作するうちに、自然と身についた考え方を記します。

 

 

 

散々悩んで下した決断には、間違いなどあり得ない。

 

もし、決断後の結果が不満なのであれば、それを憂うのではなく、より満足するために現状からどう変わったら良いかを悩み、また決断をする。

 

その時下す決断にも間違いはないはずだ。

 

 

 

少々オドオドしたデザイナーが作るcomm. arch. は、とても前向きなブランドです。(笑)

上記は、どなたの人生にも当てはまることかと思います。

おこがましいながら、もし迷いが生じたり、過去を悔んだりする事がありましたら、ちょっと思い出してみて下さい。

 

引き続きcomm. arch. は、皆様のこころの「一番」を目指し、ものづくりを続けてまいります。

派手なPRを一切行わないため地味目な存在ですが、私がすべて悩んだ末に決断し構築しているため、どんな小さな箇所箇所にも、理由を持って行っている自負があります。

 

このように文字に起こすと、とても気難しそうなデザイナーさん・・・と思われそうですが、おじさんになり、昔のカドがツルっと取れておりますので、機会がありましたらぜひお話させていただけますと幸いです。

 

私自身も、未だ見ぬcomm. arch. の変貌にワクワクしておりますし、今まで通り過度ではなく、程よく皆様の日常に寄り添えるお洋服を作り続けたいと思っております。

 

今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

comm. arch. デザイナー   髙橋 陽平